鳩ぽっぽ
よろずにかきちらしてまする。
2008'08.13.Wed
「なんだこれ」
将臣は、目の前にいきなり突き出された小さな四角い包みに、目を白黒させた。
毎度馴染みの、高校からの帰宅時(とはいえ夏休みなので、学校が組んだ特別夏期講習、の帰りであるので少し違う)に、なんだかいつもよりもそわそわと落ち着きのない幼馴染に違和感を覚えながらも、まあ大したことなさそうだしいいだろ。
と気にせず、平時どおりに接し、さて自宅も間近に迫った、といった頃合に、望美は予告もなしに、前述した行動に出た。
「ぷ」
「ぷ?プッてなんだよ」
暑いんだから、早く部屋入りたいんだけど。
額から滑り落ちてくる汗を拭いながら、片目で、低い位置…望美の背は将臣の肩あたりまでしかないので、当たり前だが、胸元あたりに差し出したままになっているブツをみやる。
「わ、分かるでしょ。持ってるじゃん!分かる感じの、片手に!」
「ああこれか」
学校指定の、くたくたになったスクールバックをかけた肩とは逆、目線を下げた手元には、店で貰った大き目のビニール袋をさげている。
そしてその中には、将臣の下駄箱やら机に詰め込まれていたプレゼントが無造作に突っ込まれていた。赤いリボンや黄色、青、と色とりどりにラッピングされたそれは、女の子からの好意で染め上げられたように華やいでいる。
直接手渡しにきた猛者もいたが、彼女らは最大限引き止めたものでも、結局は数分ほどで、荷物を抱えたまま、肩を落として去っていった。
それを知っているくせに、望美は少し不機嫌だった。将臣は理解していていたけれど、いつものようにさらりと受け流してしまえば、好機を逃しかねないと考えたのだ。だから、はぐらかした。
「今日、なんの日か分かってるでしょ!」
「分かってるぜ。俺のたんじょーびだ。祝えよオラ」
頭の上に手のひらをのせると、重みに望美が少し縮んだ。
「じゃあ受け取ってよー」
嫌な顔をして腕を払いのけると、ほら、という言葉と共に、胸に押し付けられる。
しばし笑っていたが、将臣は表情を引締めて、望美の手のひらで温まっていくプレゼントに手を添えた。
「なんで、そんなに緊張してんの?」
「し、してない!ていうか、その…離して!」
ただ添えるだけではなく、望美の両手に、両手を上からかぶせるように添えた。
案の定望美からの抵抗がみられた。言葉だけで、身じろぎもしない。目は泳いでいるし、やけに体温が上がっているように感じる。
いやそれとも、自分の体温が上がっているのだろうか。将臣には判断しかねた。
「離さねえよ。離してほしくないだろ?」
「そんなこと、ないよ…」
「上、向けよ」
「え」
顔を上げた望美の瞳に、将臣がうつりこんでいた。
ああ、やけに真面目な面してんな、とどこか客観的に観察しながらも、本能のまま動く身体を止めようとも思わなかった。
震えた望美が、ぐっと口元を緊張させたけれど、触れると見た目そのままに唇は柔らかかった。あやすように優しく食みながら、心の中で呟いた。
素直になれよ、バカ。
「…聞こえてるよ。バカ」
温んだ息を吸い込むと同時に、現実でも応えるように震えた声がして、瞼を開けると真っ赤な顔の望美が見つめていた。
「なあ、こういう時ってさ。もう一回目閉じるべきだと思うんだよ」
「バ」
「バカで結構」
言い切って、細い肩を抱き寄せると再度唇を重ねて、温度を上げあう。
真夏の蝉が耳についたけれど、このときだけは暑さに酔っ払うに良いBGMとして、心地よく感じた。
fin
*
順序が逆です。
将臣は、目の前にいきなり突き出された小さな四角い包みに、目を白黒させた。
毎度馴染みの、高校からの帰宅時(とはいえ夏休みなので、学校が組んだ特別夏期講習、の帰りであるので少し違う)に、なんだかいつもよりもそわそわと落ち着きのない幼馴染に違和感を覚えながらも、まあ大したことなさそうだしいいだろ。
と気にせず、平時どおりに接し、さて自宅も間近に迫った、といった頃合に、望美は予告もなしに、前述した行動に出た。
「ぷ」
「ぷ?プッてなんだよ」
暑いんだから、早く部屋入りたいんだけど。
額から滑り落ちてくる汗を拭いながら、片目で、低い位置…望美の背は将臣の肩あたりまでしかないので、当たり前だが、胸元あたりに差し出したままになっているブツをみやる。
「わ、分かるでしょ。持ってるじゃん!分かる感じの、片手に!」
「ああこれか」
学校指定の、くたくたになったスクールバックをかけた肩とは逆、目線を下げた手元には、店で貰った大き目のビニール袋をさげている。
そしてその中には、将臣の下駄箱やら机に詰め込まれていたプレゼントが無造作に突っ込まれていた。赤いリボンや黄色、青、と色とりどりにラッピングされたそれは、女の子からの好意で染め上げられたように華やいでいる。
直接手渡しにきた猛者もいたが、彼女らは最大限引き止めたものでも、結局は数分ほどで、荷物を抱えたまま、肩を落として去っていった。
それを知っているくせに、望美は少し不機嫌だった。将臣は理解していていたけれど、いつものようにさらりと受け流してしまえば、好機を逃しかねないと考えたのだ。だから、はぐらかした。
「今日、なんの日か分かってるでしょ!」
「分かってるぜ。俺のたんじょーびだ。祝えよオラ」
頭の上に手のひらをのせると、重みに望美が少し縮んだ。
「じゃあ受け取ってよー」
嫌な顔をして腕を払いのけると、ほら、という言葉と共に、胸に押し付けられる。
しばし笑っていたが、将臣は表情を引締めて、望美の手のひらで温まっていくプレゼントに手を添えた。
「なんで、そんなに緊張してんの?」
「し、してない!ていうか、その…離して!」
ただ添えるだけではなく、望美の両手に、両手を上からかぶせるように添えた。
案の定望美からの抵抗がみられた。言葉だけで、身じろぎもしない。目は泳いでいるし、やけに体温が上がっているように感じる。
いやそれとも、自分の体温が上がっているのだろうか。将臣には判断しかねた。
「離さねえよ。離してほしくないだろ?」
「そんなこと、ないよ…」
「上、向けよ」
「え」
顔を上げた望美の瞳に、将臣がうつりこんでいた。
ああ、やけに真面目な面してんな、とどこか客観的に観察しながらも、本能のまま動く身体を止めようとも思わなかった。
震えた望美が、ぐっと口元を緊張させたけれど、触れると見た目そのままに唇は柔らかかった。あやすように優しく食みながら、心の中で呟いた。
素直になれよ、バカ。
「…聞こえてるよ。バカ」
温んだ息を吸い込むと同時に、現実でも応えるように震えた声がして、瞼を開けると真っ赤な顔の望美が見つめていた。
「なあ、こういう時ってさ。もう一回目閉じるべきだと思うんだよ」
「バ」
「バカで結構」
言い切って、細い肩を抱き寄せると再度唇を重ねて、温度を上げあう。
真夏の蝉が耳についたけれど、このときだけは暑さに酔っ払うに良いBGMとして、心地よく感じた。
fin
*
順序が逆です。
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2007'06.03.Sun
朔攻略にかかってますー。
あーヒノエルートはいいなー。萌えるー
遥か3部屋でもできるかもしれませんね
(下かきながら思うこと)
**
すごい半端 弁望
望美達一行は、熊野別当に援軍を請うために熊野へ向かっていた。
その途というのは大変なものである。
山道の連続で、急な斜面が延々と続く。
何度か運命を上書きした望美は同じ道を行き来していて、それなりに慣れてもよかろう頃だろうに、なまじの体力ではこの山道には通用しないらしい。毎回毎回熊野道には泣かされ、やはり例に漏れず今回も望美は疲労に追い詰められていた。
鉛が脹脛・腿に圧し掛かっているように重く、おまけに脚に痛みまである。汗を額に滲ませながら、軽やかな足取りで先を行く八葉をみつめる。
現代人である望美に、移動には強制的に徒歩を要するためについた彼らの体力についていくことは酷である。譲や将臣も現代組だが、将臣はもはや現代組というにはこの世界の水に慣れきっていたし、譲は弓道部で厳しい鍛錬を元々積んでいるそれなりの猛者である上に、男であった。
性別云々で論じたくはなかったが、やはりこういう時に性別がもたらす不条理を感じずにはいられなかった。
(私も男に生まれたら、もうちょっとは楽にいけたのかな…)
昔から、男二人と共に遊んでいた望美である。スカートを身に着けて遊ぶ自分に、少しだけ嫌気がさしていたり、ちょっとしたごっこをやっても、いつもお姫様やか弱い役しかやらせてもらえなかった時には、何度も男になりたい、男になりたかったと詮無く考えたものである。
このとき、まだ体格の小さな白龍も辛そうにしていたのだが、へばっていたため無意識に羨望が彼を度外視させていた。
俯いて歩く望美は、降ってきた涼しげな声にむっとしながら顔をあげた。
「大丈夫ですか。望美さん」
いらだっている時に声をかけられれば大半はその態度のまま、人に接してしまう。
「……えーと…」
おまけに判断力が鈍くなっているらしく、誰だっけこのひと。
望美は、動かない頭に思い浮かんでは消える様々な名前と、今見つめている容貌をわざわざ一致させなければならなかった。
「おやおや…」
飛ばした不機嫌の靄に感づいたらしく、苦笑する弁慶に、望美は
しまったと思い、「すみません」と慌てて謝罪した。
「気にしませんよ。疲れている時に話しかけた僕にも責があります。もう少し、落ち着いた時に声をかければよかったですね」
「そんなことないです。…あの、なんですか?」
我に返った望美は、なぜだか熱をもつ頬をぱたぱた手で扇ぎ、冷やしながら訊ねる。
綺麗な男の人だからきっとこんなに緊張するんだろうな、と毎度結論付けているが、綺麗な男だらけの中にあって、弁慶以外に緊張しないという矛盾にはまだ行き当たらない望美である。
「このあたりで休憩をとりましょうか?顔色があまりすぐれませんよ」
ふいうちに伸びてきた手が、そっと望美の頬に触れた。
手のひらの硬く温かい、大きな感触に、望美は驚いて触れる手を凝視してしまう。
…なんとも可愛らしい人だな。
弁慶は望美の仕草から、彼女の心内が手に取るように読めてしまって、というか、一目瞭然といった彼女の動揺に触れて、笑みを零した。
不純すぎる自分には、こんな素直な反応、たとえ意識して行っても難しい。
なんか気がむけばまた書きます
・将望
「将臣くーん。元気ー?」
ベッドに寝転がったまま、長い髪をシーツに広げた幼馴染は、片手をあげた。
んだよ。んなことで勝手に部屋入ってくんなよ、もうそんなことしていい歳じゃねーだろ、なんてことは言わない。相手が身近にありすぎた望美でない、ただの女子高生なら間違いなく漏らしただろう言葉ではあったが。
「おう、望美。先帰ってたのか?」
「うん。部活入ってないし、バイトしてないし」
「俺これからバイトだぞ」
「いいよー。ちょっと覗きにきただけだから」
「…は?何を。俺の着替えをか?」
将臣が身に着けたままの制服を指差して茶化すと、望美は笑って、そんなわけないでしょ!と一蹴した。
「暇だから来ただけだよ。あと、譲くんへのお礼って、お母さんからケーキ預かってきたの、渡しに来たんだよ」
「あー。母さんいねーもんな今。俺預かっとくぞ」
「いいや。もうキッチンにメモと一緒においてきちゃったから」
いいながら、素足をぱたぱたさせる望美は、ドアの傍に立つ将臣に背を向けた格好で寝転がり、顔だけはこちらを向いているといった体勢である。
望美も制服のまま。靴下は一応ベッドに上がるからと遠慮して脱いではいるが、脱いだ靴下は床に放置している。
ぱたぱた。
短いスカートで気にせずぱたぱた、を続ける望美。
…このやろう。
非常に、消極的にだが、将臣は内心で毒づいた。
当たり前のデリカシー。しかし二人には、真面目に存在してはならないもの。
望美は、一応用件をつげてすっきりしたのか、勝手に将臣の部屋から拝借した、地域情報雑誌に目をむけ、完全に将臣から意識を外した。
「ふうん…」
適当に返事をしてなんでもないふりを装いながらも、目は際どい大腿部へと吸い寄せられていた。
膝裏の節から白い大腿部へと続く柔らかそうな曲線を辿る。性か、辿ってしまう。辿らざるおえない。
下着はギリギリみえていないが、寝転がってまくりあがったスカート丈が更に短くなったせいで、双山に続く付け根あたりがちらちらと見える。
将臣は、ここで本来ならば、望美に幼馴染セクハラをしかけなければならなかった。
「おーい。みえるぞーのぞみさーん」とか「バーカ」とか、とにかく真面目でない、路線で。
しかし困ったことに、視線が剥がれないのだ。
むしろみえちまえとさえ思う。
しかしそうはならなくとも、勝手に頭がみえている光景を想像している。
いやらしい皺とか丸みとかそういう、細かいところまで。
視線を上にやると、白ブラウス姿の望美の背には下着の線がはっきり浮き出ていた。
性別を気にせず接していられた幼馴染は、彼にとって、既に一人の女として認識されていた。
望美はそうではない、まだ違うと断言できる。彼女は性別とかあまり気にしていない。だから男のベッドの上に平気で寝そべることが出来る。
将臣には、思うままに行動すればどういう行為に自分が出るかまでよく理解していた。だから、歯止めの効かなくなる前にそこで思考を強制終了させた。
これ以上はだめだ。
将臣は後ろ手でドアを閉めつつ、上着を望美の頭にわざと脱ぎ捨てた。
短い悲鳴のあと、望美はこちらに身をひねって睨んだ。
「なにするのよ!?」
「このバカ!」
「はあ!?」
「だからお前は彼氏できねーんだよ!バカ!」
「なにいってんのよいきなり!」
*
将望がこんなに萌えるのは、自然すぎるからだと思います。
普通にいそうなんですもんこのカプは。
あーヒノエルートはいいなー。萌えるー
遥か3部屋でもできるかもしれませんね
(下かきながら思うこと)
**
すごい半端 弁望
望美達一行は、熊野別当に援軍を請うために熊野へ向かっていた。
その途というのは大変なものである。
山道の連続で、急な斜面が延々と続く。
何度か運命を上書きした望美は同じ道を行き来していて、それなりに慣れてもよかろう頃だろうに、なまじの体力ではこの山道には通用しないらしい。毎回毎回熊野道には泣かされ、やはり例に漏れず今回も望美は疲労に追い詰められていた。
鉛が脹脛・腿に圧し掛かっているように重く、おまけに脚に痛みまである。汗を額に滲ませながら、軽やかな足取りで先を行く八葉をみつめる。
現代人である望美に、移動には強制的に徒歩を要するためについた彼らの体力についていくことは酷である。譲や将臣も現代組だが、将臣はもはや現代組というにはこの世界の水に慣れきっていたし、譲は弓道部で厳しい鍛錬を元々積んでいるそれなりの猛者である上に、男であった。
性別云々で論じたくはなかったが、やはりこういう時に性別がもたらす不条理を感じずにはいられなかった。
(私も男に生まれたら、もうちょっとは楽にいけたのかな…)
昔から、男二人と共に遊んでいた望美である。スカートを身に着けて遊ぶ自分に、少しだけ嫌気がさしていたり、ちょっとしたごっこをやっても、いつもお姫様やか弱い役しかやらせてもらえなかった時には、何度も男になりたい、男になりたかったと詮無く考えたものである。
このとき、まだ体格の小さな白龍も辛そうにしていたのだが、へばっていたため無意識に羨望が彼を度外視させていた。
俯いて歩く望美は、降ってきた涼しげな声にむっとしながら顔をあげた。
「大丈夫ですか。望美さん」
いらだっている時に声をかけられれば大半はその態度のまま、人に接してしまう。
「……えーと…」
おまけに判断力が鈍くなっているらしく、誰だっけこのひと。
望美は、動かない頭に思い浮かんでは消える様々な名前と、今見つめている容貌をわざわざ一致させなければならなかった。
「おやおや…」
飛ばした不機嫌の靄に感づいたらしく、苦笑する弁慶に、望美は
しまったと思い、「すみません」と慌てて謝罪した。
「気にしませんよ。疲れている時に話しかけた僕にも責があります。もう少し、落ち着いた時に声をかければよかったですね」
「そんなことないです。…あの、なんですか?」
我に返った望美は、なぜだか熱をもつ頬をぱたぱた手で扇ぎ、冷やしながら訊ねる。
綺麗な男の人だからきっとこんなに緊張するんだろうな、と毎度結論付けているが、綺麗な男だらけの中にあって、弁慶以外に緊張しないという矛盾にはまだ行き当たらない望美である。
「このあたりで休憩をとりましょうか?顔色があまりすぐれませんよ」
ふいうちに伸びてきた手が、そっと望美の頬に触れた。
手のひらの硬く温かい、大きな感触に、望美は驚いて触れる手を凝視してしまう。
…なんとも可愛らしい人だな。
弁慶は望美の仕草から、彼女の心内が手に取るように読めてしまって、というか、一目瞭然といった彼女の動揺に触れて、笑みを零した。
不純すぎる自分には、こんな素直な反応、たとえ意識して行っても難しい。
なんか気がむけばまた書きます
・将望
「将臣くーん。元気ー?」
ベッドに寝転がったまま、長い髪をシーツに広げた幼馴染は、片手をあげた。
んだよ。んなことで勝手に部屋入ってくんなよ、もうそんなことしていい歳じゃねーだろ、なんてことは言わない。相手が身近にありすぎた望美でない、ただの女子高生なら間違いなく漏らしただろう言葉ではあったが。
「おう、望美。先帰ってたのか?」
「うん。部活入ってないし、バイトしてないし」
「俺これからバイトだぞ」
「いいよー。ちょっと覗きにきただけだから」
「…は?何を。俺の着替えをか?」
将臣が身に着けたままの制服を指差して茶化すと、望美は笑って、そんなわけないでしょ!と一蹴した。
「暇だから来ただけだよ。あと、譲くんへのお礼って、お母さんからケーキ預かってきたの、渡しに来たんだよ」
「あー。母さんいねーもんな今。俺預かっとくぞ」
「いいや。もうキッチンにメモと一緒においてきちゃったから」
いいながら、素足をぱたぱたさせる望美は、ドアの傍に立つ将臣に背を向けた格好で寝転がり、顔だけはこちらを向いているといった体勢である。
望美も制服のまま。靴下は一応ベッドに上がるからと遠慮して脱いではいるが、脱いだ靴下は床に放置している。
ぱたぱた。
短いスカートで気にせずぱたぱた、を続ける望美。
…このやろう。
非常に、消極的にだが、将臣は内心で毒づいた。
当たり前のデリカシー。しかし二人には、真面目に存在してはならないもの。
望美は、一応用件をつげてすっきりしたのか、勝手に将臣の部屋から拝借した、地域情報雑誌に目をむけ、完全に将臣から意識を外した。
「ふうん…」
適当に返事をしてなんでもないふりを装いながらも、目は際どい大腿部へと吸い寄せられていた。
膝裏の節から白い大腿部へと続く柔らかそうな曲線を辿る。性か、辿ってしまう。辿らざるおえない。
下着はギリギリみえていないが、寝転がってまくりあがったスカート丈が更に短くなったせいで、双山に続く付け根あたりがちらちらと見える。
将臣は、ここで本来ならば、望美に幼馴染セクハラをしかけなければならなかった。
「おーい。みえるぞーのぞみさーん」とか「バーカ」とか、とにかく真面目でない、路線で。
しかし困ったことに、視線が剥がれないのだ。
むしろみえちまえとさえ思う。
しかしそうはならなくとも、勝手に頭がみえている光景を想像している。
いやらしい皺とか丸みとかそういう、細かいところまで。
視線を上にやると、白ブラウス姿の望美の背には下着の線がはっきり浮き出ていた。
性別を気にせず接していられた幼馴染は、彼にとって、既に一人の女として認識されていた。
望美はそうではない、まだ違うと断言できる。彼女は性別とかあまり気にしていない。だから男のベッドの上に平気で寝そべることが出来る。
将臣には、思うままに行動すればどういう行為に自分が出るかまでよく理解していた。だから、歯止めの効かなくなる前にそこで思考を強制終了させた。
これ以上はだめだ。
将臣は後ろ手でドアを閉めつつ、上着を望美の頭にわざと脱ぎ捨てた。
短い悲鳴のあと、望美はこちらに身をひねって睨んだ。
「なにするのよ!?」
「このバカ!」
「はあ!?」
「だからお前は彼氏できねーんだよ!バカ!」
「なにいってんのよいきなり!」
*
将望がこんなに萌えるのは、自然すぎるからだと思います。
普通にいそうなんですもんこのカプは。
2006'02.24.Fri
彼というひとについての、最も鮮烈な記憶は油性絵の具の匂い。
木目が見えないくらいに色という色で塗装された、パレット。
* *
両親に囲まれて、初めて。初めて彼と出会った時、少女はその蒼い瞳が零れんばかりに見開いて、口元に隠すように思わず手を添えていた。
「紹介するわねコゼット。彼が、今日から家にしばらく下宿することになった、画家のマルチェロ・オルランドよ」
「初めまして。コゼット・ドーヴェルニュ」
まだ二十歳には達していないだろう…あどけなさが残る顔立ちの青年は、柔らかに微笑をたたえながら浅く腰掛けていた木箱から立ち上がり、軽く会釈をした。
「は、はじめ、まして…」
「あらあら。どうしたのコゼット」
なぜか気恥ずかしくなった14歳のコゼットは、すす、と母の後ろへと引き込んでしまい、誰とでもすぐに打ち解ける、懐っこい娘の珍しい所作に、驚いている。
「不思議ですね、コゼットとは、僕。どこかで会った事があるような気がするんですよ…なぜでしょう」
「あらマルチェロ。この小娘を口説くには、まだ早すぎますわ」
「お、お母様!!」
背後に回ったまま、コゼットは母のドレスを引っ張って抗議する。
冗談と受け取っているのかそうではないのか、判然としないコゼットは、なんとも返答せぬまま笑うマルチェロを、母が前で両手を結んでいる為に腕と腰の間に生まれた隙間から、覗いている。コゼットは妙に高揚した、変な気分に包まれている。
「しかし…本当に、綺麗だ。コゼットは。まるでお人形のよう」
紫を細めて妙な所からこちらを監視している少女を、青年は困ったように亜麻色の髪を掻きあげ、目をやった。
予期せず鉢合った視線は、コゼットの感覚では火花が散らせた。
彼女は顔を真っ赤にさせる。なぜだかよく分からないが恥ずかしくて、青年がただでさえ優しく甘いマスクに、蜂蜜を塗して顔を蕩かせたので、このまま致死量に何かが達して、死んでしまうのではないかと本気で思った。
「お、おかあさま…どうして、あの、マルチェロ画伯は、家に?」
しばらく下宿するというのならば、なんらかの用件があるということだ。父が絵画が好きで、自画像もよく描かせているが、専属絵師は既にドーヴェルニュ家にはついている。白髪を蓄えた、コゼットにとって親しみ深い祖父のような存在の絵師である。
祖父を解雇でもしてしまうのだろうか、とも心配になったが、実際彼女の頭を占めていたのは、いつまで自分がこうして動揺し続けなければならないのかという、不可解な心配だった。
「ああ。そうね、まだ話していなかったわ。マルチェロ。貴方からお話くださいな。私は、夫から昨日話を聞いたばかりだから」
「分かりました。僕も、直接彼女に話そうと思っていたんです」
話の流れについていけず、コゼットは母のドレスを握りしめて右往左往視線を母と青年に往復させていて、ふと。彼女の白磁の横顔に影が落ち、不思議に思ったコゼットがそちらに顔を向けると、驚きのあまり心臓が飛び出しそうになった。
マルチェロがいつの間にか母の正面から移動し、母の後ろに隠れるコゼットのすぐ隣に腰を折ってしゃがんでいる。
そして止めとばかりに、青年は一撃必殺の会心の笑みを浮かべて言った。
膝に肘をのせて頬杖付き、小首を傾げている青年をみて、昔絵本で読んだゴマちゃんを思い出す。
「コゼット。君の絵を、是非描かせてもらいたいんだ」
「お、おかぁさまぁ〜!!」
コゼットは悲鳴を上げた。
木目が見えないくらいに色という色で塗装された、パレット。
* *
両親に囲まれて、初めて。初めて彼と出会った時、少女はその蒼い瞳が零れんばかりに見開いて、口元に隠すように思わず手を添えていた。
「紹介するわねコゼット。彼が、今日から家にしばらく下宿することになった、画家のマルチェロ・オルランドよ」
「初めまして。コゼット・ドーヴェルニュ」
まだ二十歳には達していないだろう…あどけなさが残る顔立ちの青年は、柔らかに微笑をたたえながら浅く腰掛けていた木箱から立ち上がり、軽く会釈をした。
「は、はじめ、まして…」
「あらあら。どうしたのコゼット」
なぜか気恥ずかしくなった14歳のコゼットは、すす、と母の後ろへと引き込んでしまい、誰とでもすぐに打ち解ける、懐っこい娘の珍しい所作に、驚いている。
「不思議ですね、コゼットとは、僕。どこかで会った事があるような気がするんですよ…なぜでしょう」
「あらマルチェロ。この小娘を口説くには、まだ早すぎますわ」
「お、お母様!!」
背後に回ったまま、コゼットは母のドレスを引っ張って抗議する。
冗談と受け取っているのかそうではないのか、判然としないコゼットは、なんとも返答せぬまま笑うマルチェロを、母が前で両手を結んでいる為に腕と腰の間に生まれた隙間から、覗いている。コゼットは妙に高揚した、変な気分に包まれている。
「しかし…本当に、綺麗だ。コゼットは。まるでお人形のよう」
紫を細めて妙な所からこちらを監視している少女を、青年は困ったように亜麻色の髪を掻きあげ、目をやった。
予期せず鉢合った視線は、コゼットの感覚では火花が散らせた。
彼女は顔を真っ赤にさせる。なぜだかよく分からないが恥ずかしくて、青年がただでさえ優しく甘いマスクに、蜂蜜を塗して顔を蕩かせたので、このまま致死量に何かが達して、死んでしまうのではないかと本気で思った。
「お、おかあさま…どうして、あの、マルチェロ画伯は、家に?」
しばらく下宿するというのならば、なんらかの用件があるということだ。父が絵画が好きで、自画像もよく描かせているが、専属絵師は既にドーヴェルニュ家にはついている。白髪を蓄えた、コゼットにとって親しみ深い祖父のような存在の絵師である。
祖父を解雇でもしてしまうのだろうか、とも心配になったが、実際彼女の頭を占めていたのは、いつまで自分がこうして動揺し続けなければならないのかという、不可解な心配だった。
「ああ。そうね、まだ話していなかったわ。マルチェロ。貴方からお話くださいな。私は、夫から昨日話を聞いたばかりだから」
「分かりました。僕も、直接彼女に話そうと思っていたんです」
話の流れについていけず、コゼットは母のドレスを握りしめて右往左往視線を母と青年に往復させていて、ふと。彼女の白磁の横顔に影が落ち、不思議に思ったコゼットがそちらに顔を向けると、驚きのあまり心臓が飛び出しそうになった。
マルチェロがいつの間にか母の正面から移動し、母の後ろに隠れるコゼットのすぐ隣に腰を折ってしゃがんでいる。
そして止めとばかりに、青年は一撃必殺の会心の笑みを浮かべて言った。
膝に肘をのせて頬杖付き、小首を傾げている青年をみて、昔絵本で読んだゴマちゃんを思い出す。
「コゼット。君の絵を、是非描かせてもらいたいんだ」
「お、おかぁさまぁ〜!!」
コゼットは悲鳴を上げた。
2006'02.24.Fri
キラは最近、気分が良かった。
あとは、このデータをオーブに送って、ラクスの部屋に寄ろう。
昼時だし、一旦会議室から帰ってきてるかも。
オーブ軍服に身を包み、ターミナル本部廊下を端末抱えて歩く姿は、普段ならば軍人らしく見えるのかもしれないが、現在は気分がるんるんしている為、青年が想い人に告白してOK返事をもらったばかり、というような浮かれぶりで軍人というか、やや童顔である顔が余計に緩んでいるお陰で、中学生のようであった。
第二次大戦は旧クライン派代表、ラクス・クラインの提案により一先ず停戦となった。今はまだ休戦協定はオーブ・プラント間で締結されていないが、旧クライン派が介在役となり水面下で着々と双方代表者自らが席に着き、会見が幾度となく開催されている。宇宙からの戦力引き上げをオーブから打診し、また実行に移すことでプラントにもこちらが敵愾心を持っていないことを示した結果、臨時評議会委員代表も、やや軟化し、プラントとの信頼関係も上層部では徐々に回復の兆しを見せていた。
そう遠くないうちに、おそらくは休戦協定締結も実現されるだろう。
「最近はいいことが続くなあ…」
キラはカガリ達オーブ幹部と共に、宇宙へと渡航してきていた。一応はオーブに正式入隊し、それなりの階位も与えられている彼は、おいそれと宇宙を「ラクスが心配だから」などという理由で闊歩しているわけにはいかず、停戦後はオーブにしばらく戻り、オーブ復興に技術面やMSでの撤去作業等に手を貸していたのだが、どうにも落ち着かず、うろうろしているのを見かねたカガリが、
「ラクス達を介在人にして、会見をやるんだ。護衛も、会議での裏方技術サポートも欲しい。何より今のところは極秘裏に勧めていることだから、なるべく当事者主導で全体をまかないたい。宇宙に、ついてきてくれないか?」
と声をかけたのだ。
カガリとしては「ついてきてくれないか」というより、「つれていってやるよ」くらいの心持であったのやもしれないが、比重としては実際問題困っていたので、キラに心から支援を要請した形である。
首長たるカガリが軍総帥に位置づく以上は、キラは部下であるから要請などせずとも命令を出せば事済むことであったが、非常時にカガリの代行としてキラを入軍させたのであり、キラは命令される立場にないと考えていた。
キラとしては、とりあえずオーブ軍人であるため、命令とあらばカガリを信じ、手助けできるよういつでも動くつもりであったが、今回に関しては命令でなくても、飛びついていただろう。
ラクスには、大体半年くらいロクに会ってなかったし。
いや、会うには会っていたのだが、ラクスはプラントから訪問を希望されることが多く、またターミナル代表でもある彼女は処理に追われ、あちこちに飛び回らねばならなかったのである。旧クライン派が停戦を提案し、両国に承諾されたとはいえ、万人から信頼を取得した訳ではない。
彼女曰く、「客寄せパンダは、それなりに理由があるからこそただのパンダではないのです」とのこと。
でもパンダよりかはラクスの方が可愛いと、キラは思っている。
レッサーパンダの方があってるかな?何かふわふわしてて、目もまん丸く愛らしいところなんて。色がサファイアではないのが残念だけど。
あとは、このデータをオーブに送って、ラクスの部屋に寄ろう。
昼時だし、一旦会議室から帰ってきてるかも。
オーブ軍服に身を包み、ターミナル本部廊下を端末抱えて歩く姿は、普段ならば軍人らしく見えるのかもしれないが、現在は気分がるんるんしている為、青年が想い人に告白してOK返事をもらったばかり、というような浮かれぶりで軍人というか、やや童顔である顔が余計に緩んでいるお陰で、中学生のようであった。
第二次大戦は旧クライン派代表、ラクス・クラインの提案により一先ず停戦となった。今はまだ休戦協定はオーブ・プラント間で締結されていないが、旧クライン派が介在役となり水面下で着々と双方代表者自らが席に着き、会見が幾度となく開催されている。宇宙からの戦力引き上げをオーブから打診し、また実行に移すことでプラントにもこちらが敵愾心を持っていないことを示した結果、臨時評議会委員代表も、やや軟化し、プラントとの信頼関係も上層部では徐々に回復の兆しを見せていた。
そう遠くないうちに、おそらくは休戦協定締結も実現されるだろう。
「最近はいいことが続くなあ…」
キラはカガリ達オーブ幹部と共に、宇宙へと渡航してきていた。一応はオーブに正式入隊し、それなりの階位も与えられている彼は、おいそれと宇宙を「ラクスが心配だから」などという理由で闊歩しているわけにはいかず、停戦後はオーブにしばらく戻り、オーブ復興に技術面やMSでの撤去作業等に手を貸していたのだが、どうにも落ち着かず、うろうろしているのを見かねたカガリが、
「ラクス達を介在人にして、会見をやるんだ。護衛も、会議での裏方技術サポートも欲しい。何より今のところは極秘裏に勧めていることだから、なるべく当事者主導で全体をまかないたい。宇宙に、ついてきてくれないか?」
と声をかけたのだ。
カガリとしては「ついてきてくれないか」というより、「つれていってやるよ」くらいの心持であったのやもしれないが、比重としては実際問題困っていたので、キラに心から支援を要請した形である。
首長たるカガリが軍総帥に位置づく以上は、キラは部下であるから要請などせずとも命令を出せば事済むことであったが、非常時にカガリの代行としてキラを入軍させたのであり、キラは命令される立場にないと考えていた。
キラとしては、とりあえずオーブ軍人であるため、命令とあらばカガリを信じ、手助けできるよういつでも動くつもりであったが、今回に関しては命令でなくても、飛びついていただろう。
ラクスには、大体半年くらいロクに会ってなかったし。
いや、会うには会っていたのだが、ラクスはプラントから訪問を希望されることが多く、またターミナル代表でもある彼女は処理に追われ、あちこちに飛び回らねばならなかったのである。旧クライン派が停戦を提案し、両国に承諾されたとはいえ、万人から信頼を取得した訳ではない。
彼女曰く、「客寄せパンダは、それなりに理由があるからこそただのパンダではないのです」とのこと。
でもパンダよりかはラクスの方が可愛いと、キラは思っている。
レッサーパンダの方があってるかな?何かふわふわしてて、目もまん丸く愛らしいところなんて。色がサファイアではないのが残念だけど。